56.アニメ映画作品から復習するコスプレ –ジブリ編①–

みなさん、年末にかけての金曜ロードショーはご覧になったでしょうか?
2020年最後の金曜ロードショーは風の谷のナウシカでしたね!

そんなわけで今回の内容は以前まで長々とお話したアニメの話の中でもジブリアニメのお話。

コスプレを遊ぶうえでやはりチェックしておきたいのはTVアニメだけでなく、もちろんアニメーション映画バッチリ押さえておきたいところです。そんなわけで今回は日本を代表するアニメーション会社である「スタジオジブリ」作品をまたいつものコスプレ目線でご紹介。
コスプレができそうな作品、コスできなさそうに見えてもこれまでのジブリ映画作品をどどんとラインナップしていきます。

風の谷のナウシカ(1984)

© 1984 Studio Ghibli・H

「少女の愛が奇跡を呼んだ」(徳間書店)

実はまだ「スタジオジブリ」としては発足前の作品ですが、こちらはカリオストロの城とは異なり原作から全て宮崎監督自身の発案でありスタジオジブリの一室的な前進作品となることからかここから紹介されることが多いです。
人類文明が崩壊した「火の七日間」と呼ばれる最終戦争によって環境が激変し、生存圏の多くが猛毒の瘴気を放つ腐海と酸の海に変貌してしまった未来。少ない安全圏の一つである「風の谷」は今もなお戦争を続ける軍事国家「トルメキア」の侵略を受けてしまい安寧の地を脅かされることとなっていきます。
作中では腐海の真実を通して私たちの現実の世界の姿について向き合う真摯な作品のため文化庁優秀映画製作奨励賞をはじめ、国内外で多数の賞を受賞した作品です。

© 1984 Studio Ghibli・H

コスプレとしても人気が高く、全体的に細かく完成された世界観が独特のスチームパンク要素とファンタジックな雰囲気を醸し出す面からも、モブから主人公まで幅の広いコスプレが可能な作品といえます。
コミケのノリで行けば、主人公ナウシカサイドの風の谷のキャラクターではなく、敵対勢力の一つであるクシャナ殿下やクロトワを中心とした兵士たちのコスプレを集めた「トルメキアセット」のような併せが観られる可能性も高いというのも魅力ではないでしょうか。

甲冑に身を包んだトルメキア兵(左)剣の他にも銃を使用したりと、顔が無い「モブ」ながらも作品の世界観を広げる重要なキャラクターです
© 1984 Studio Ghibli・H

天空の城ラピュタ(1986)

© 1986 Studio Ghibli

「ある日、少女が空から降って来た…」(徳山雅也)

スタジオジブリとしての初映画作品。当時はまだ今の様なアニメ映画という表現が浸透していなかったためか「血湧き肉踊る”漫画映画”」という謳い文句で予告が流れました。

© 1986 Studio Ghibli

古代から発展し続けた飛行文明の最高峰である「飛行石」とそれを活用していた「ラピュタ」はいつしか歴史の中の伝説としてやがて人々の記憶から忘れ去られますが、あるとき父の空への想いを受け継ぐ少年パズーと伝説の飛行石をもつ少女シータが出会う事から冒険の幕があがります。

冒険活劇ならではの物語が展開され、ロボット兵やフラップターなど多くのロマン溢れる宮崎監督の世界が展開され、現代もファンを魅了し続ける作品です。
コスプレとしてもこちらもナウシカ同様に豊富で、パズーとシータなどメインキャラクターによる併せだけではなく、軍隊からドーラ一家、果ては筋肉でシャツをビリビリに破く親方のコスプレまで、多種多様に渡りながらもその圧倒的な知名度の高さから、どんな細かいコスプレをしても誰かが必ずネタを拾ってくれるという面白さがあります。
金曜ロードショーでの放送もしばしば行われるため、ジブリ史上最もコスプレのしやすい作品かもしれません。

© 1986 Studio Ghibli

となりのトトロ(1988)

© 1988 Studio Ghibli
※有名な1枚なので一部の方にはご存知かもしれませんが、初期の設定ではサツキとメイは存在せず、2人を合わせたような少女が描かれていました。

「このへんないきものは まだ日本にいるのです たぶん。」(糸井重里)

今やジブリ映画のロゴであり、いわば顔的な作品。
当初は絵本として企画されたというコトもあり、やや大人向けなナウシカ、さらに年齢層を広げたラピュタよりもさらに広く、子どもから大人までを対象とした位置づけになりました。

© 1988 Studio Ghibli

ストーリーは戦後日本が安定して来た頃の初夏、小学生のサツキと妹のメイは母の療養のために農村の家に引っ越してきます。ところが家の隣の大きな楠の木にはふしぎな生き物が住んでいて…。
上映当時は興行収入をそれほど獲得できませんでしたが、後年の金曜ロードショー放映などで爆発的に人気となり、子どもに見せたい映画のTOPにまでなりました。
コスプレでは意外にも、衣装が終始一貫している「お父さん」がわかりやすいところから、ご家族で「草壁一家併せ」なんて楽しげなコスプレも楽しめることと思われます。

© 1988 Studio Ghibli

火垂るの墓(1988)

© 野坂昭如/新潮社,1988

「4歳と14歳で 生きようと思った」(糸井重里)

敗戦色が濃厚となる昭和20年の神戸市を舞台とした映画。
こちらは高畑勲監督の映画で、小説が原作にある作品の映画化です。
反戦映画のように捉えられがちではありますが、本来は1945年当時の神戸市の様子を入念に描き、そこで起こっていた現実の一風景を描いたドキュメンタリー的側面のほうが強い映画といえます。
救いの無い非常に悲しい内容ではありますが、当時上記の「となりのトトロ」との同時上映がされた映画です。
ちなみにコスプレが果たして存在するのかという作品ですが、検索するとなんとちらほらといらっしいます。真摯な作品なだけに手がつけづらい面があると思いますが、再現をしつつ当時を憐れんで見るという方法もあるのかもしれません。

魔女の宅急便(1989)

© 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」(糸井重里)

角野栄子先生原作の児童文学「魔女の宅急便」の映画化作品。
ところが「宅急便」という言葉がヤマト運輸の登録商標であったために、何とかスポンサーとして許諾をいただこうとしたところ、作中に黒猫が登場するということから承諾を得る事ができたという、制作前からもちょっと可愛い経緯のある作品。

© 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

作品ターゲット層も20代の経済的に自立した女性として、原作にあったファンタジー感よりも現実にもし魔女がいたら?程度のニュアンスに変える事で、実際に「働く」人に向けた作品としての色を強くしていきました。
(1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことによる、女性の社会進出の影響を受けたのかもしれませんネ)
映画の主な主ターゲットを20代女性とはしていますが、こちらも大人から子どもまで大人気の作品なので、見るのも実際にコスプレするにも幅広く楽しむことができるという特徴があります。

© 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

以前イベントではお子さんに魔女のキキのコスプレをさせて、ご両親でパン屋の夫妻のコスプレをしているご一家さんもいらっしゃいましたよ!

おもひでぽろぽろ(1991)

© 1991 岡本 螢・刀根夕子・Studio Ghibli・NH

「私はワタシと旅に出る。」(糸井重里)

岡本螢先生原作、刀根夕子先生作画の漫画を元にした映画作品。
アニメとして作成するには難解な内容にも関わらず、さらに作画面では顔のシワの動きをアニメとして再現し、アニメとしてのリアリズムを表現した意欲作。

© 1991 岡本螢・刀根夕子・Studio Ghibli・NH

コスプレとしては日常系に分類される作品のため非常に難解でかつ、多作品に比べてTV放送回数も少ないことからやや知名度に劣る点が輪をかけています。
しかしながら2021年からNHKにてテレビドラマ版が放送予定ですので、話題性を利用してコスプレをしてみるというのも手段かもしれません。

© 1991 岡本螢・刀根夕子・Studio Ghibli・NH

NHKスペシャルドラマはこちら!↓
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/440407.html

紅の豚(1992)

© 1992 Studio Ghibli・NN

「カッコイイとは、こういうことさ。」(糸井重里)

原作は月刊モデルグラフィックスにて連載されていた漫画「宮崎駿の雑想ノート」の中の1節である「飛行艇時代」という部分で、本作はこれを劇場用に膨らませた内容となります。
かつての大戦でアドリア海のエースと呼ばれたポルコ・ロッソは大戦後は紅い飛行艇を駆り空族相手に賞金稼ぎをする日々を送っていた。
しかし空族がアメリカの最新鋭の飛行艇を扱うカーチスを雇い、ひょんなことから、イタリアのエースポルコと飛行艇乗りの意地を賭けた真剣勝負が行われることとなる。

© 1992 Studio Ghibli・NN

宮崎監督の趣味の世界を全力で投じたロマン100%の作品、世界恐慌真っ只中の暗い時代背景ではありますが、誰も死なないドンパチをしている点から子どもにも安心して見せる事ができ、ジブリならではのリアルで細かい描写とキャッチコピーどおりの「カッコイイ」に心揺さぶられた方も多いと思います。
(最近はガールズ&パンツァーで兵器のもつロマンや格好良さをスポーツ的に魅せるということも普及してきましたしね)

コミケでは冒頭のパラソルつきの椅子で座りながら参加するコスプレイヤーさんのご様子が伺えたり、過去には憎めない敵役である空賊「マンマユート団」楽しく練り歩く光景もありましたよ!

© 1992 Studio Ghibli・NN

海がきこえる(1993)

© 1993 氷室冴子・Studio Ghibli・N

「高知・夏・17歳 僕と里伽子のプロローグ」(氷室冴子)

こちらは映画ではなく、日本テレビ開局40周年を記念して制作されたアニメ作品。スペシャルアニメとして放送された後、いくつかの映画館でも放送されました。

© 1993 氷室冴子・Studio Ghibli・N

スタジオジブリとしては紅の豚制作後に宮崎監督が「若いスタッフで何か1本制作を任せてみてはどうだろうか」という試みからスタートをしました。そのため本作では宮崎監督や高畑監督らが一切関わらない初の作品となり、この時のスタッフさんが現在のスタジオジブリや他のアニメ業界で活躍されていると思うととても感慨深い作品として見ることもできます。
ジブリ作品としてもマイナーな部類のためコスプレとしては難解な面はありますが、検索をしてみるとちょっとだけコスプレをされている方がいらっしゃいましたので、ファンの方は参考にして挑戦してみてはいかがでしょうか。

© 1993 氷室冴子・Studio Ghibli・N

平成狸合戦ぽんぽこ(1994)

© 1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

「タヌキだってがんばってるんだよオォ」(糸井重里)

高畑勲監督による原作脚本監督の初3役オリジナル作品。
昭和40年代の日本は戦後の高度経済成長期で豊かな山や森に溢れていた多摩丘陵もまた「多摩ニュータウン」としてマンモス団地の建造が始まることとなる。
森を追い出されそうになった多摩の狸たちは断固開発阻止を企み、伝統的な変化術「化学」(ばけがく)によって開発の手に対抗しようとするのであった。

© 1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

上映は94年なので既にバブルも弾けて、作中の時代とは逆に日本経済は落ち込みを始めるころではありますが、当時丁度CO2や地球温暖化問題などが浮き彫りになった時代であり、そういった側面からもメッセージ性が伺える作品です。

© 1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

コスプレとしては…狸ですからねぇ〜、と思いながらググるとなんと「四国三長老」の超ファンキーな登場シーンのコスプレをされている方がいらっしゃいましたので、熱いファン魂を感じることができました。

第1弾はココまで!

年代で言うと1984年から1994年なので大体ちょうど10年分!ここまでで9作品なので、1年に約1本映画を出してくるというコトになります。
ハイペースで名作を排出するスタジオジブリ、次回は意外なあの作品もご紹介です。

参考:Wikipedia、スタジオジブリ三鷹の森ジブリ美術館、ジブリ関連書物等

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